「妖怪人間ベム」第3話 感想

数日前から風邪っぽくて調子が悪くて,ベムの日(巷では「土曜日」と呼ぶ)は家で寝てました。家にいるんだから見ればいいわけなんですけども,何となくこのドラマは万全の体調で見ないといけないような気がして,ながら見とかぼんやり眺めるみたいな観方ではダメなんじゃないかという気がして,やめておきました。ま,はっきり言って単なる思い込みなわけですが,ともかく何日か遅れで録画を視聴。いつも通り,感想をメモっておきます。(2011/11/08記)

  • 一通り見終わって,一番最初に思ったのは「うーむ,こう来たか」ということ。一筋縄ではいかないというか,何と言うか。おー,そうか,細田くんんじゃなくて平田さんだったか!みたいな(違)。冗談はさておき,今回は伝えたいことがいつも以上にいっぱい詰まっているような気がして,そして,そのどれも決して取りこぼしてはいけないことのような気がして,難しかった(悪い意味ではなく)。
  • そのようなわけで,いつも以上に散漫な感想になりますが,ご了承ください。
  • 和久井さんの「妖怪さん」「おチビちゃん」という呼び方が優しくて良い。最後の手紙ももちろんぐっと来るのだけど,「雪男を見てみたい」というノートの文字を消して「こういうことかな」とほほ笑むところが,もう。画面がぼやけて見えて,非常に困った(近頃涙腺が弱くて/苦笑)。
  • その一方で,和久井さんはどうしてあそこまで自然に「妖怪さん」たちの存在を受け入れることができたのだろう,ということを考えはじめると,日頃の自分を反省させられるというか,少しいたたまれない気分になる。私は,自分と違う人とか自分の理解の範囲を超えるものに出会ったときに,打算などの一点の曇りもなく,その存在を受け入れることができるだろうか。
  • ベムたちが人間になりたいと願い続けるのは,これまでに登場した犯人たちのように歪んでしまっている人ばかりではなく,所々で和久井さんみたいな人に出会って,一瞬でも嬉しくなったり,束の間でも幸せを感じたりしてきたからなんだろうな,と思う。だからこそ,あそこまで純粋に「人間は素敵な存在だ」というオーラが出せるんじゃないだろうか。
  • それにしても,ベムたちの果てしない純粋さ,絶望的なまでの切なさは,どこまで続くのだろう。河野プロデューサーの“人間讃歌”,ここに極まれり,という感じがする。“Q10”の時にある程度表現しつくしたように思っていたけれど,今回も一切のブレなく,容赦なく。だから,着地点がとても楽しみであると同時に,とても怖い。
  • 和久井さんとベムとベロが肩車の話をするところの表情を見ていると,やっぱり“家族”に対する思い入れというか憧れというかが一番強いのはベムのような気がする。和久井さんに「息子は君のほうかな」と言われたときのベムの,少し困ったような,でも決して嬉しくないわけじゃない表情が,すごく印象的で好き。
  • 何気に一番複雑なのはベム,ベラ,ベロの関係性かもしれない。親子というには対等で,でも兄弟というにはやはりベロが幼すぎる。では,仲間ではどうか,とも思うのだが,この語が少し軽いものに思えてしまうほど,複雑で濃い関係性が彼らには存在する気がする。
  • その一方で,ベロが,ベラに対してもベムに対しても対等に見ている感じが見え隠れするのが面白い。「ベラ,めんどくさがってたじゃ〜ん」とか「ベムも(肩車)やってもらえば?」とか。それに対して,「あ?」とすごんで対等にやりあう,一見大人げないベラ。冷静に諭したり,父親的反応をするベム。でも肝心な時には,ベラが一番歳上に見えるのはなぜだろう。ベムのほうがベロと共通する幼さみたいなものを持っているような気がする。純粋さを隠し切れずにストレートに表現してしまっているからか。ベラもベロも同じものを持っているんだけど,そう簡単には表に出さないんだよね。
  • ベロのアクロバティックなシーンが可愛くて,良い。ベムが軽々とアクロバティックな動きを見せる後ろで,いっちょまえに同じ動きをしてついていくベロ(しかも,むちゃくちゃ楽しそう)。そのあとの,荒らされた和久井さんの部屋を見たときのベロの「あー,めちゃくちゃ」というセリフも合わせて,とても好きなシーン。
  • ベラ姐さんが良い。ぶっちぎりで良い。いや,前回から十分良かったが,今回の「ちょっと視界に入っちまっただけさ」にはシビれた。そうかと思うと,涙が効かないとわかったときのすねっぷりも最高。「流そうが流すまいが,関係ないね」には爆笑してしまった。
  • ベムは,ベロとかベラみたいに「このセリフが良い」とか「このシーンが良い」というような感想が書きにくい。例えば今回なら,和久井さんの部屋で気持ちが高ぶって変身しそうになるのをこらえながら話をしているときのベムは良いと思ったのだが,あそこは亀ちゃんの演技もさることながら,CGとか特殊メイクとかの技術的な完成度の高さも合わさったシーンだと思うので,ベラとかベロみたいな形での感想が書きにくい。
  • でも,じゃあベムは格好良くないのかというと,そうではない。ビジュアルが,とか,このシーンが,というのがちょっと憚られるくらいに,ただただ全体的に良い。ひたすら美しい。妖怪人間が実は純粋な心の持ち主なんだということや作品全体が全力で伝えようとしている“人間讃歌”的な部分の多くは,ベムが画面に存在していることで表現されているように思う。
  • 亀ちゃんのことをこんなにも繰り返し見たいと思ったのは,いつ以来だろうか。本当に久しぶりに“君がいる 素晴らしすぎる”(From“喜びの歌”)という気分になっている。